里のシンボルづくり

青年の樹・植樹プロジェクト

 オリーブの里の現状は、まだ見ぬオリーブの樹が植樹され生育するまで、雑草生い茂る言わば荒野。
これからオリーブの里づくりに賛同、協働してくれる人たちに向けて目印になるような象徴的な存在、大きく育ったオリーブの樹を植樹できないか?

 常磐線末続の駅に向かう列車からも望める耕作地の一角に、いわき市内に点在し、この10年育ててきたオリーブの樹の中から元気な「成木」を選んで移植、シンボルツリー「青年の樹」として植樹をし、初植えの時にお披露目する計画です。

 「この地に足を踏み入れる実感」「きっと何年かの後には、あんな風な樹々が一面を覆うに違いないと抱く期待感」を醸成するための発案でした。

鉄のシンボルツリーに込めた思い

 このプラン検討の中で生まれたアイデアが 「鉄のシンボルツリー」です。

 人の一生が100年、オリーブの樹が300年としても、確実なことは生あるものは必ずいつかは死ぬという事実です。一日生きることはそれだけ死に近づくことであり、逆に死につつあることは、まだ死んでいない証と言えるでしょう。大切なのは「永遠なるものなど存在しない」、だからこそ生を輝かす時間と、次代に何をどうやって受け継いでいくか、ではないか?

 オリーブの里にふさわしい造形物・ランドマークとして着目したのは、「鉄」という素材でした。
ご存知の通り、鉄は人類の発展を支えてきた金属元素の1つで、湿った空気中では錆を生じ、時間の経過とともに黒ずんだり褐色へと変色して、やがて「土」に還ります。土に還った鉄分は植物を通じて動物の体内に取り込まれ、血液に不可欠なヘモグロビンを構成するミネラルとして働きます。

 人の一生と同じく、時とともに錆びてやがて土に還っていく鉄――私たちは、この鉄の素材で造られたシンボルツリーと、一面に植えられ成長を遂げるオリーブの若木の風景を想像しました。それは「生と死の狭間」の中で、自身を見つめ直し、置き忘れて来た「何か」を探す旅路にも例えられるものでした。

鉄のオリーブの樹――彫刻家・安斉重夫氏の賛同を得て

 そして、サプライズです。この「鉄のシンボルツリー」企画を、福島市出身・いわき在住の「鉄の彫刻家」として世界的にも著名な安斉重夫さんに伝えたところ、鉄製オリーブの樹の製作を引受けていただけることに! 安斉さんは、私たちが考えるずっと以前40年も前から鉄の彫刻に取組み、宮沢賢治の物語や自作の詩をテーマに、鉄と言う素材に魂を吹き込んで、あたたかで生き生きとした造形を生み出してきました。

 「安斉重夫のオフィシャルホームページ」詩の一節をご紹介します。

「鉄の詩(うた)」

私は知っている 鉄の心を
鉄は歌っている 鉄の詩を
鉄のふるさとは はるかに遠い星
ずうっと ずうっと昔に
巨大な星が死んで 鉄は生まれた
星は爆発し ちりとなり
宇宙をただよい やがて集まり
たくさんのドラマがあって
鉄は地球の核となった
永い時のはてに 鉄は心を持った
そして 歌う
あなたの血液の中にも たくさんの鉄
鉄は酸素を運び
​あなたの体の中で 歌っている

オリーブの葉を模した鉄製リーフを手に、来たれ末続へ!

 私たちは、安斉さんにもう一つ、鉄のツリーと合わせ、鉄の葉っぱを作って頂きたいとお願いしました。若木の植樹に参加する会員のみなさんお一人おひとりに手渡せる、鉄製リーフです。

 葉っぱには会員名が記されていて、末続の地にそれぞれ持参していただくプランです。言わば、鉄製の葉の重みを命の重みと感じて、自然の営みに思いを馳せる人たちの証として、鉄製リーフの製作をお願いしたのです。快諾いただきました!

 例えば、鉄製のツリーの枝の先には、葉の受け口としてネジが切られ、葉っぱにもそれぞれネジぐちが付けられ、来訪した人たちは、そのネジを回して自分の葉を取り付けていく想定です。

 一本のシンボルツリーに100枚余りの鉄製の葉っぱが生い茂る風景を想像してみてください! オリーブの里づくりをともにする仲間たちに、心込めて。

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